「ガラクタ横丁で迷子?」
『そうなんだよ。商店街のみんなで探しちゃいるが、どこにも見当たらない。手を貸してくれ!』
そんな一報を受けて店を飛び出していった道端さんは、数時間後に男の子を連れて戻ってきた。
一体どこに隠れていたのか、二人とも土埃まみれだ。
「だから言ったでしょう。うっかり別の街区に入ると、戻ってこられなくなるんですよ」
珍しく強い口調で諭す道端さんだが、まさに現代の神隠しを経験した迷子は、疲れ果てて夢の中だ。きっと目が覚めたら、迷子になっていた間のことも忘れていることだろう。
それでいいのかも知れない。現代社会を生きる子供にとって、ここ数時間の出来事は刺激が強すぎたことだろう。
「ちなみに、どこまで迷い込んでました?」
「八番街です。いやあ、戻るのに苦労しました」
何でもないことのように笑う道端さん。
失われた街・八番街。遙か昔に通行手段が失われ、ないものとして扱われているはずの街まで行って帰ってきたのだと、彼はそう言っているのだ。
「……むしろ、どうやって戻ってきたんです?」
「ナイショです」