永遠に続くかと思えた猛暑が、波が引くように鎮まっていき。気付けば朝晩に一枚上着を羽織るようになって、玄関の靴箱からはサンダルが消えた。
流石にまだコートを出すには早すぎて、長袖のパーカーを着こんで外に出れば、庭木を見上げる文さんと鉢合わせて、思わず笑顔になる。
「お出かけですか?」
「うん。ちょっと郵便局にね」
スニーカーの踵を直しつつ、彼女の視線の先を辿れば、そこには一枚だけ紅く染まった楓の葉。
「秋だね」
「秋、ですわ」
気合の篭った返答。エア竹箒を握りしめ、決意に燃える瞳で楓の木を見つめる文さんは、すでに落ち葉との格闘を始める気満々だ。
幾度も巡る季節。繰り返される挑戦。
秋の訪れは、いつだって物悲しい。