帰宅すると、部屋の前にどでかい段ボール箱が置かれていた。
「今朝、ご実家から届きましたよ」
通りがかった文さんの言葉に、もうそんな時期かと頭を抱える。
この時期、上京組による『実家から送られてきた果物の押し付け合い』は、もはや風物詩だ。
退寮して配るあてもないから不要だと言ったのに、それでも送ってくるのが親心というやつか。
「りんごですか? 香澄さんの大好物ですわ」
「でも、この量ですよ」
段ボール一箱分の果物というのは、意外と消費が難しい。
「他の皆さんも協力してくださるでしょうし、それでも余りそうなら、ジャムやパイにするのも良いですね」
文さんの提案に、ほっと胸を撫で下ろす。
今年は腐らせたりせずに済みそうだ。